陶芸作家 渡部秋彦「雷神窯」 

渡部秋彦 昭和34年山形市平清水 生
     昭和58年 平清水に雷神窯 築窯
     平成20年 静岡県函南町に新窯を築窯移転
     第34回、35回、37回、平成12年度日本伝統工芸展入選
     日本伝統工芸新作展 5回入選
     日本工芸会正会員
     平成12年NHKBS2”焼もの探訪”にて工房を紹介される
     東急百貨店、京王百貨店、渋谷黒田陶苑等個展
     平成8年より毎年秋 アトリエ トムにて個展
     穴窯をつかって青瓷、白瓷を中心に、粉引陶器、焼き〆陶器など作陶
     今後は美濃焼などにも挑戦する

       山形駅より車で10分程の蔵王山
      
       麓、千歳山の山際に雷神窯はあ

       ります。

     付近は平清水とよばれる東北の有

      名な窯場の一つです。 かつては

      数十軒の窯元があったそうですが、

     いまは数軒の窯元が点在するだけ

     で、駅に近いせいか一見郊外の住

     宅地といった雰囲気です。氏は現在

     青瓷、白瓷にとりくんでおり、その苦

     労話を聞きがてら、今回は窯だしを

     見せてもらえるというので、平清水の

     工房をおたずねしました。

 
青瓷 瓶子
その時、作家の緊張と不安が、私た
ちの心にもピーンとはりつめて伝わっ
てきました。 サヤが,一つづつはづ
され、作品が目の前に置かれた瞬間
、まだ余熱が伝わる青瓷の壷や、茶
碗が、まるで生きているもののごとく
ピィン!ピィン!と
・・・それはガラスの風鈴のように繊細
で涼しげな旋律・・・
音をたてて貫入が入っていく様を、な
んと目で体験できて、本当に興奮し
てしまいました。

穴窯を駆使して、中国北宋時代
の青瓷の再来をと追及している、渡部
秋彦氏の窯だしを、拝見できるチャン
スを与えられ,是非にと、かけつけま
した。 氏は、二日間ひたすら薪を焚
きつづけ、その後火をとめ、五日間さ
まして、私たちの到着をまっていてく
れました。 そして、いよいよ、火前の
方から,一つ一つだされてくる作品に
感嘆と吐息をつきながら、ただ、ただ
見入るばかりの私でした。

   窯だし前の穴窯の内部
 見えるのは、サヤと呼ばれる青瓷を
収める容器。 まだ中は百度近い温度。


取り出した青瓷を一つ一つ点検しながら並べる作家。  
丸二日間の徹夜に近い窯焚きは、 熱さと、寝不足で
かなりの体力 を消耗するそうです。   そんな疲労も、
みごとに焼きあがった 作品の数々をみれば、忘れてしまいます。  
窯の中は、まだまだ百度前後の温度で、
氏は、何分もしない内、全身、玉の汗で
出てきては、少し休んで、又入っていく
というくりかえしでした。
出たばかりの青瓷は、まだなんとなく白
っぽい感じでしたのに、ピィン、ピィンと
貫入の入る音をたてながら、青みをまし、
落ち着いた色にと変わっていきます。
 青瓷はこうして何年、何十年を経て変わ
っていくものと伺い、驚きの連続でした。
 なかなか出会えない貴重な体験ができ
て、本当に良かったと興奮さめやらない
私でした。 

窯だしのあと、窯焚きの苦労話をお聞き
きしながら、氏が山奥の秘密の場所に分
け入り採集してきてくださった何種類かの
山菜を、氏のご母堂の手料理で舌鼓を
うち、大満足の1日でした。    平成20年工房は静岡県函南に移転し ました。 

窯の中から青瓷を取り出す。   
 窯焚きの2日間で、使う薪、 赤松は、かなりの量です。     
窯の温度を最高にするときは、 油分の多い薪が使われます。 
薪は、そうした種類別にキチン と区分けされて、窯の周りに 
積まれています。                
   
青瓷(青磁)

青に発色する釉薬がかけられ、1200度以上の高温で焼かれる陶磁器をいいます。
中国で生まれ、宋の時代に完成の域に達しました。 青の色は釉薬にわずかに含まれる鉄分が窯のなかでの還元焼成により化学変化をして生まれます。釉は何度もかけて,その都度焼成し厚くし、焼成中に釉や素地から噴出するガスが細かな気泡となって釉中に散乱し、それが深い落ち着きのある青を生み出します。大変手がかかる、難しい陶磁器の一つで手がける作家は少ないです。
青瓷の瓷は、中国では、釉のかかつた陶磁器を意味するそうです。
特に、窯変米色瓷は窯の中での特別な条件により全体にピンクがかった色相になる大変希少な作品です。

渡部秋彦氏は宋の時代の陶性の青瓷の優品に敬意を表し、陶性という意味で青瓷という字を当てているようです。


窯変青瓷 花器   渡部秋彦 H22作
貫入
素地と釉薬の収縮率の違いにより起こる釉のひびのことをいう。 陶器によくおきるが、磁器では比較的少ない。

サヤ(ボシ、エンゴロ)
窯のなかで作品が灰をかぶり汚れないように使われる窯詰道具である容器。窯の中を効率よく使う為の道具でもある。

穴窯(あながま)
最も原始的な形の窯です。斜面を掘って天井をつけた形式です。古墳時代(4〜5世紀頃)に朝鮮から渡来してきた技術者により伝えられたものです。
当時は粘土を固めて天井などをつくったのでしょうが、今は雷神窯の穴窯のように耐火レンガが使われることが一般的です。 形が原始的ゆえに扱いもたいへんむずかしく、季節、その日の気温、湿度、薪の状態などいろいろなファクターにより出来あがりが左右されるそうです。それだけに、作家の期待を超えたものが出来あがることもあり、窯出しの時は作家の期待と不安の一瞬なのでしょう。

   平成29年度作品展出品作

窯変米色瓷抹茶碗

粉青瓷茶碗

窯変米色瓷酒会壺


窯変米色瓷角皿


白磁碗

織部向付

織部豆皿


展示会場 青磁の他、白磁・粉引き・天目・三島・焼〆
など多才な技術を使い食器 カップ&ソーサー、湯呑
皿、鉢、ぐい呑み、蓋付碗など普段使いの器も出品。

作家

作品は、アトリエ トム にて
常設展示されています。


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